滋賀県を観光形態の変化に対応できる街にしようと、滋賀大学(彦根市馬場)は県内の民間団体と「滋賀の観光イノベーション研究会」を設立。さきごろ、大津市内で最初の会合を開いた。
観光の形態が文化やアート、デザイン、本物を重視するシフトに変化していると分析。民間レベルで滋賀の観光振興に向けたグランドデザイン(全体構想)をつくり、問題提起と実行支援をしていこうと、近江ツーリズムボード(彦根商工会議所内)や文教スタヂオ(彦根市佐和町)、びわ湖大津プリンスホテル、琵琶湖汽船らの代表者と研究会を立ち上げた。
研究会の公表データによると▽外国人観光客の訪日前の楽しみは日本食、買い物、景勝地、町歩きで、観光後の次回には温泉、生活体験、スポーツなどを求めている▽滋賀は東京と大阪を結ぶゴールデンルート上にあるが、訴求力が弱く、うまく生かせていない▽滋賀への日本人観光客は50歳代と60歳代が多い▽滋賀への日本人観光客の目的は自然、歴史資源、町並み、琵琶湖が多い―ことなどを紹介。
また滋賀大が昨年11月に彦根や長浜、大津など県内5カ所で外国人観光客を対象に行ったアンケート調査では、アジアや欧州の20歳代と30歳代の観光客が多く、名所や旧跡、琵琶湖、地域の食を楽しみにしていることがわかった。
滋賀の観光の課題としては「日帰り客が大半で滞在期間が短い」「外国人に訴求できるコンテンツがない」「外国人観光客の漁業体験の禁止など規制がある」「花火大会などのイベントが経済効果を生んでいない」を指摘した。
このほか最初の会議では、健康医療と観光の分野をコラボさせた「ウェルネスツーリズム」を取り上げ、高付加価値と中長期の滞在型の観光につながり、移住や定住の導線にもなり得ると提唱した。今後、研究会は2月20日に大津で2回目の会合を開き、3月15日午後2時~彦根キャッスルリゾート&スパで「世界を魅了する滋賀の観光の新たな展望」(仮称)をテーマにフォーラムを開催する。研究会主宰で滋賀大学社会連携研究センター長の石井良一教授は「民間と大学による自由な発想で滋賀のこれからの観光についてのグランドデザインを描いていきたい」と話している。