彦根市指定文化財の荒神山神社(清崎町)の社務所と書院、書院中(ちゅう)門の大規 模な改修工事が行われている。
荒神山神社は飛鳥時代の天智天皇の時に近江国四カ所に設けられた祭祀場の一つが起源。奈良時代以降は仏教が加わり、神仏習合の地として奥山寺など寺院が複数あったとされる。大坂の陣では彦根藩二代藩主の井伊直孝の戦勝を祈願し、その礼として護摩殿や書院などが建立された。明治時代の神仏分離令により奥山寺が廃止され、荒神山神社と改称された。
社務所は境内東側にあり、19・6㍍×11・8㍍の広さで主屋が桟瓦葺き。棟札に「天保十年(1839)九月十八日」、南端の鬼瓦に「天保十二年」と記されている。書院は社務所に接しており、畳廊下とつながっている。奥の座敷、次の座敷とも8畳の造り。19世紀前期から社務所の建築時期にかけて建てられたとされる。書院中門は木材の輪郭線が17世紀後半の模様だが、様式から19世紀前期に改修されたという。
書院などが建築から200年以上、社務所が約180年経過しているため、柱の傾きや雨漏れなど老朽化が目立っていた。書院の改修工事は平成28年秋から始まり、昨年12月に完了。社務所の改修工事が今年4月から始まり、2年後の12月の完成を目指す。書院中門は社務所の完成後に着工される。
総工費は8000万円以上(市の補助は約900万円の予定)で、現在も企業や個人からの寄付を受け付けている。奥山二三男宮司(69)は「大規模な修復をするのは今の時期だと思い、決断した。これから先、200年以上続く建物になってほしい」と話している。
市指定文化財はほかに山ろくの遥拝殿があるが、明治9年10月から明治12年4月28日までに建てられた本殿や拝殿、神饌所などを含め、今回は改修されない。同神社は毎年6月末に水無月祭を営み、茅の輪くぐりや神楽奉納などをしているが、例年通り実施する。