彦根市長選は23日、投開票が行われ、現職の大久保貴氏(53)が1万5311票を獲得し、新人で前市教育長の前川恒廣氏(61)、新人で元毎日放送記者の田原達雄氏(68)を破り、再選を果たした。しかし、現職が獲得した「信任票」と新人2人を足した「批判票」を比べると、批判票が4165票も上回っており、市民は必ずしも現市政を評価したとは言えない結果になった。
特に平成36年に開催される滋賀国体では主会場が彦根になるため、新しい市民体育センターの整備費(約60億円)を含む関連費用約100億円を計画通り進めるのか否かで、現職と新人2人の意見が分かれた。
大規模事業について、大久保氏は「やりくり算段して、計画通り着実に進める」とし、前川氏と田原氏は市の財政が厳しいとして「計画の見直し」を主張。また新人2人の陣営からは「現職には有力な人が付いており、利権が絡む恐れがある」と牽制する声も頻繁に聞かれた。
選挙戦ではこの大規模事業を中心に、稲枝地域の振興策、教育・子育て問題なども取り上げられ、3氏がそれぞれの主張を展開したが、連合滋賀の推薦を受け、民進党の国会議員、県議、市議、自民党の国会議員、県議、市議からも支持を得た大久保氏が知名度と組織力で序盤から有利な選挙戦を展開。中盤以降、新人2人の追い上げを受けたが、次点に4465票差を付けて勝利した。
前川氏は自民党の国会議員、県議、市議、公明党の市議、民進系の市議が付き、市民体育センターの計画見直し、教育・子育て支援の充実、経済振興などを唱えて猛追したが、勝利には至らなかった。選挙後、前川氏は本紙の取材に「多くの市民の皆さんに訴えが浸透できなかったのは残念だ。保守票が割れてしまったことや候補者を一本化できなかったことも影響したと思う」と語っていた。
田原氏は議員の応援がなく、同級生を中心にした草の根の選挙戦を展開。市の財政問題、中学3年生までの医療費無料化、稲枝地域の振興などを訴え、最下位に終わったが、健闘した。選挙後、田原氏は「予想以上に得票が少なかった。厳しい選挙戦だった」と振り返り、告示前に持ち上がった前川氏との一本化については「一本化しても現職に勝てるとは思わなかった。今もその判断は間違っていないと思っている」と話していた。
「チャンス生かし強い彦根に」
午後10時ごろ、びわ湖放送で当確の報道が出ると、西今町の選挙事務所内の広間に大久保氏が国会議員や県内の首長、支持者から拍手と歓声を受けながら登場。
万歳をした後、大久保氏は滋賀国体にふれ「間に合うように県と協力していきたい」とし、対立陣営が指摘してきた財政面については「彦根の財政は極めて健全。市民からは心配する声もあり、説明不足だと思っている。まちづくりの大きなチャンスであり、そのチャンスを生かしていきたい。真の意味での強い彦根を作っていきたい」と語った。
また翌日の24日には市長選の当選証書の付与式が市役所5階であり、市選管の小川良紘委員長から大久保氏に証書が渡された。式後、記者陣に大久保氏は選挙戦の感想などを語った。
選挙戦を振り返っての問いに大久保氏は「市の財政状況を市民の皆さんに理解して頂く作業が十分でなかったと思っている。ほかの候補者がおっしゃった財政危機の文言に市民が反応されたこともあった。色々と考えさせられた選挙だった」と述べた。
次期市政で相次ぐ大規模事業については「予算的なことよりも難度が高い事業が重なると理解しており、それを乗り越えるために頑張っていきたい」とし、そのうち図書館整備については「用地の選定をどういう手法でするのか、時間がかかる可能性があるが、最善を尽くしたい」と説明。
最後に、市民に向けては「継続して頑張れとの審判を頂いた。持てる力をすべて出し切って実績をあげる4年間にしたい」と話した。