彦根市の花しょうぶ通り商店街から芹町にかけたエリアが市内では初めてとなる重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定される。国の文化審議会が20日の会議で決定し、文部科学大臣に答申した。 選定される重伝建地区は河原1丁目~3丁目と芹町の東西約470㍍、南北約620㍍、総面積約5㌶の範囲。江戸時代は城下町の南東部に形成された町人街で、城下町と中山道を結ぶ町並みだった。当時は河原町、袋町、安清町、善利新町と呼ばれ、そのうち河原町が元和4年(1618)以前に、善利新町が寛永18年(1641)に整備されたとされる。17世紀末期には米、油、菓子などの小売店が多く、特にたばこ屋が多数を占めていた。 文化財課は平成21年度から翌年にかけて同地区で建物調査を実施。同23年度からは地元住民や大学教員らによる伝統的建造物群保存審議会で協議し、保存計画を立てた。同地区には調査した建物を含め、江戸時代から昭和の戦前期に建てられた町家風の建物が88軒残っており、そのうち国の登録有形文化財が5軒ある。
建物の特徴としては前面に切り妻造りで瓦ぶき2階建ての主屋があり、敷地の背面には土蔵を置いている。花しょうぶ通り沿いには銀行風の近代建築や洋風に改造された建物もあり、近代以降も商業地として栄えた様相を残している。
ほかの滋賀県内の重伝建地区は近江八幡市八幡、大津市坂本、東近江市五個荘金堂。全国では今回、河原町・芹町地区と名古屋市有松地区が選ばれ、計102件となる。
河原・芹町の重伝建地区選定に向けてはいくつかの「難関」を突破する必要があったが、地元住民と市の尽力で達成することができた。
花しょうぶ通り商店街の一部は都市計画道路に指定されていた。また重伝建地区になった場合、「伝統的建造物は外観の変更や解体ができない」「伝統的建造物以外の建て替え時には基準に適合させる必要がある」などの条件があるため、住民との合意形成が必要な状況だった。
市は平成23年3月に市内の歴史的景観の保存に向けて、彦根市伝統的建造物群保存地区保存条例を制定。同24年11月からは河原町と芹町で住民説明会を開き協議を重ねた。また地元住民たちも同25年1月に「河原町・芹町 美しいまちづくり委員会」を立ち上げ、重伝建地区の選定を目指し活動。「まちなみ相談室」を設けて、相談の受け付けや各戸へのチラシ配布などに取り組んだ。
選定を受けて、同委員会委員長で花しょうぶ通りのギャラリー力石の所有者・力石寛治さん(78)=平田町=は「生まれ育った町並みが残っていくことが決まり、大変うれしい。この風景を何とか残さなければいけないとの住民の思いが重伝建地区の選定に結びついたのだと思う」と話していた。
※解説=河原町・芹町の住民と文化財課が目指していた重伝建地区の指定をようやく手に入れることができる。古い町並みを後世に保存できるという点で小生も安堵している。
一方で、市内にはほかに芹橋、本町、七曲り通り、高宮、鳥居本の5地区が重伝建地区の候補にあげられるが、年々、古い建物が取り壊されているのは事実だ。
重伝建地区に指定されるにはまずは地元住民の理解を深める必要があり、まちづくりの先進地として全国的に知られる花しょうぶ通り商店街でさえも、住民の意見をまとめるのには苦労したようだ。
残された5地区の皆さんには是非、河原町・芹町を手本に前に進めて頂きたい。 (山田)