紛争地や看取りの現場を撮影しているフォトジャーナリスト・國森康弘さん(39)=大津市=が9日、文化プラザで「『いのち』をつなぐこと」をテーマに講演。人権市民のつどいの講師として招かれ、約850人が聴き入った。
國森さんは自身が撮影した写真を流しながら、さまざまな「死」を取り上げた。食べられなくなり、やせていく東近江市永源寺町の住職の写真では、家族がいつも付き添っていたり、近所の住民が話しかけにやってくる場面を表しながら、亡くなった後に虹が龍のように真横に出来た光景を示し「人が旅立つ時は不思議なことが起こる」と話した。
亡くなる1週間前に自分から入れ歯を外して食べなくなり、眠るように逝った永源寺町の92歳の女性については、仲が良かったひ孫の女児が亡くなったひいおばあちゃんの顔にかかった白い布を外し、額やほおに触れ、手をさすったりして時間をかけてお別れしていた様子を紹介。女児が通う小学校の3割の児童が「死後もリセットできる」と答えたアンケートの結果を報告しながら、その女児は「『人は死んだ後、とても冷たくなって、二度と生き返らないけれど、心の中で生き続ける』と答えた」と、死を肌で感じさせる重要性を説いた。
平均で14日しか生きられないという染色体が1本多い胎児の出産を決意した夫婦については、出産後わずか30分ほどで亡くなり、冷たくなった我が子を何度も抱きしめる夫婦やその親、亡き子のための布団を購入する父親、棺に入れられた様子の写真をあげながら「悲しさだけでなく、幸せな面もあったのではないか」と説明した。ほかにも、國森さんは障害を負った女児や若い女性、アフリカやイラクの紛争地で被害を受けた子どもらの死を取り上げ、会場内は終始、鼻をすする音やハンカチで目をふく光景が見られていた。