彦根市稲部町と彦富町にかけての稲部遺跡が「極めて重要な遺構」と確認された。ただ、稲部遺跡の発掘調査は市道芹橋・彦富線の道路改良工事に伴って実施されたため、今後は保存か市道整備かの調整協議が始まるとみられる。
稲部遺跡周辺での市道の整備範囲は約800㍍で、市は平成22年から用地買収を始めており、市道路河川課によると、これまでに63%の買収を終え、事業費としてすでに約1億5500万円(平成27年度末)使っている。整備完成時期は平成31年度内を目指している。
一方で文化財課は稲部遺跡の第7次調査をしていた今年から、道路河川課に対して「相談していた」といい、遺跡周辺の道路計画の見直しを暗に求めていた。文化財課の担当者は「稲部遺跡の保存と市道の整備、どちらも実現できる着地点が見つかれば良いのだが」と話している。
稲部遺跡が重要な遺構だった報道を受けて、今後は「保存」に向けた動きがあるとみられるが、道路河川課の担当者は「まだ協議を始めるかどうかもわからないため、こちらとしては計画を着々と進めるしかない」としている。
専門家からは「邪馬台国時代の国家形成の有り様を考える重要な遺跡だ。抜本的な保護対策を早急に講ずるべきで、保存と活用を慎重に考慮してほしい」(奈良県立橿原考古学研究所共同研究員の森岡秀人さん)との意見が出ており、今後は保存に向けた議論が広がるのは必至で、最終的には市長判断が必要だとみられる。