新修彦根市史・通史編現代の発刊を巡って彦根市と執筆者が対立している問題で、両者が1日に6回目の民事調停を行い、すべての修正点において合意した。しかし今後、調停を終了させる手続きや議会での採決により、市監査委員が勧告した年内刊行は厳しく、来年にずれ込みそうだ。
市と執筆者は、先月5日の5回目の調停で市が提示した修正部分の字句46カ所、内容68カ所のうち、編集方針などの「凡例(はんれい)文」を除く部分で合意。凡例文は、①平成22年1月末に市史編集委員会から市に提出された原稿について、市と執筆者が協議を重ねて、歴史的事実の誤りなどがないように努力した②本書の内容は各執筆者の研究成果をもとに示した一つの見解であり、異なる見解を排するものではない③本書の執筆内容は巻末の一覧通りであり、内容上の責任は各執筆者が負う―という内容。執筆者側は前回の調停時点で、②について「通史編のほかの巻には無い記述を入れるのは不自然」、③について「市側の要望で修正しているのに市がまったく責任を負わないのはおかしい」と指摘していた。
これに対し市側は先月24日までに、②を削除することと③「本書」を「本巻」に修正するのみで残すことにし、また大久保市長の巻頭言を原文のままで掲載する案を執筆者側に提示。執筆者側も同意した。
1日の調停が最後だと思われたが、市が調停手続きを終了させて市議会へ諮りたい意向を示したため、正式な合意には至らなかった。今後は和解案を議会に諮り、11月28日(予定)に最後の調停を行い、補正予算(500~600万円)を市議会で可決した後に印刷に入る。このため、年内発行は厳しい公算で、早くても来年1月になりそうだ。
執筆者側代表の上野輝将・元神戸女学院大教授は「まだどうなるのか、という不安が残っている」とした上で「市民の皆さんも発刊を心待ちにされているのでは。読書会をやって、批判や感想を頂くことを心待ちにしている」と話していた。