彦根市芹川町の作家・中川啓子さん(73)がこのほど、東京駅の保存活動の様子をえがいた小説「東京駅物語」を刊行した。次作は彦根藩が登場する幕末から明治時代にかけた作品で、年内に完成させる。
中川さんは第二次世界大戦中に上海で生まれ、戦後は新潟や大阪などに住み、結婚を機に29歳で東京へ移住。約10年後に始まった東京駅の保存運動にも25年間携わった。東京在住時から小説を書き始め、これまでに短編13作と中川さんが幼年期を過ごした上海をえがいた長編「上海ぎほり」を刊行している。
「東京駅物語」は、東京駅との出会いから、あこがれの東京ステーションホテルでの結婚、東京駅解体の危機、保存運動、存続決定までを自叙伝風に書き上げた作品。
中川さんは「東京駅はつぶされて高層ビルになるところだった。元の姿に復元されて本当に良かったという思いを込めて書いた」と解説。昨年1月には、幕末から明治にかけての小説を書くため、歴史的文献が多く残る彦根に移住。「彦根の古い町並みも取り壊されていると聞いている。昔の彦根のままでいてほしい」とも話していた。
「東京駅物語」は155ページ、1050円。問い合わせは中川さんの自宅兼出版社・ぎほり舎☎(47)6062。