英国の元アナリストで国宝や重要文化財を修理する小西美術工藝社(東京都港区)代表取締役社長のデービッド・アトキンソンさんが、「海外から見た彦根、そして世界遺産登録の可能性」をテーマに彦根商工会議所で講演した=写真。
デービッドさんは、日本の人口減少と高齢化が進む推移を数値で示しながら「先進国の中でも日本ほど人口減と高齢化が進む国はない。国の収入が激減するのは間違いなく、これまでの常識が常識でなくなる」と解説。収入の一つになる観光に関して「日本人に代わる消費者が必要であり、日本は稼がなければならない国になる。外国人を『歩くお札』と見るべきだ」と、外国人観光客を増やすための観光施策を進めるよう求めた。
観光に必要な要素としては、自然、気候、文化、食事をあげ「日本はこれらの条件を満たす稀有(けう)な国だ」と賞賛したうえで「ただ日本各地にある神社仏閣に対して、外国人は区別することができず、長期滞在は難しい。日本が持つ最大の強みは自然であり、最強の伸びしろだ」と助言。彦根城だけではなく、琵琶湖などと連携させた観光施策を推奨した。
外国人観光客を増やす方法として、デービッドさんはCustomer Experience(顧客満足)をあげながら、彦根を散策した感想として「彦根駅に到着した時に誘導させるという簡単なことができていない。これで外国人に人気が出るのか」と疑問視。彦根城博物館の展示物の案内などの外国語表記についても「英語を横文字にしただけで、3年ほど日本語を習って和訳したほどのレベル。意味不明な個所がいくつもあって、外国人にはまったくわからない。あの英語では国宝に失礼だ」と切り捨てた。改善策としては「井伊家や歴史的流れなどを外国人が理解できるよう、翻訳の専門家を国から送ってもらうことが良い」とアドバイスした。
世界遺産登録については「世界遺産は建物などを保存するため、またブランドとして発信する材料だ」としたうえで「世界遺産を進めるのと同時に、井伊家の歴史や当時の日本の歴史的事件を外国人に分かりやすく伝えるのが重要。琵琶湖との関係を含めて、彦根城だけでない、彦根という観光地化を作ることが不可避だ」と述べた。
デービッドさんの講演会は彦根商議所の彦根ヒストリア講座の3回目として開かれた。