彦根城の中堀のオニバス=市指定文化財天然記念物=が生育していないことから、市の委託で滋賀県立大学環境科学部4年生の曽我部共生さん(21)が、市民団体・彦根城オニバスプロジェクトのメンバーと一緒に調査に乗り出している。
オニバスは夏に5~8枚の葉を広げ、開花するが、全国的に自生場所が減っており、県内では彦根城中堀と金亀公園事務所の裏手のみで、県の絶滅危惧種になっている。
中堀では約3000平方㍍が自生地だが、ここ20年は減少傾向に。彦根城オニバスプロジェクトなどが保護活動をしているが、昨年以降はほとんど育っていないという。
育たない原因として、これまでは周辺に自生するハスの生育拡大や水質の富栄養化が影響しているとされていたが、今年はハスも育っていない状況。その理由の一つに、環境省の要注意外来生物に指定されているミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)による食害があがっている。
市の依頼を受け、曽我部さんはまず、アカミミガメを捕獲した後に甲羅に穴を開けて標識を付ける手法で生息数を調査。これによりオニバスの指定地に100頭ほどいることがわかったという。
また、生物が侵入できない目合い(10㍉×10㍉)と、大型生物は入れないが小型が入れる目合い(40㍉×40㍉)、すべての生物が侵入できる3パターンのフェンスを3カ所ずつ設置。それぞれにオニバスの苗を5~10株ずつ入れて、アカミミガメによる食害を調べている。このほか、中堀で捕獲したアカミミガメを県立大学内で飼育しながら、どのえさを好んでいるかも調査している。
曽我部さんは「アカミミガメの数が増えており、植物を食べていることから、オニバスが育たない事に関与している可能性がある」と話しており、年内にも調査結果を報告するという。
オニバス「里親」募集
オニバスの生息数を増やすため、彦根城オニバスプロジェクトはオニバスを育てる「里親」を募集している。7月6日午後2時~市役所別館で育て方の勉強会があり、受講者に市役所内の池で育てている苗を渡す。参加無料。問い合わせは市生活環境課☎(30)6116。