ヨーロッパの城郭建築の専門家でエクス・マルセイユ大学教授のニコラ・フォシェールさんがこのほど、「世界からみた彦根城と城下」をテーマに彦根城博物館で講演。世界遺産登録を目指す彦根のまちの魅力などを話した。
ニコラさんはフランスのヴォーバンの要塞群の世界遺産登録に尽力し、平成28年度からは彦根城の世界遺産に向けて国外の資産との比較研究で協力している。
講演会でニコラさんはすでに世界遺産に登録されている姫路城との違いとして、彦根に城下町が残っている点に触れた上で「彦根は水と関係が深いまちであり、防衛的な機能、3つの堀を使った町割り、米などを運ぶ交通手段、産業活用など水が色んな役割を果たしていた」と説明。「水と森林の緑の美しさを備えた自然と文化が出会う場所であり、一言で表すと『ハーモニー(調和)』だ」と述べた。
城を中心に3つの堀を巡らせて同心円的に作られた江戸時代の町割りについては「軍事的、政治的、行政的な革命で誕生したまちであり、世界的に見てもほかにはない特徴だ」と紹介。「彦根の城下町が今まで残っているのは建物の高さなど規制が設けられてきたためだろう」と語った。
最後にニコラさんは「金沢の町家と比べると規模が小さいかもしれないが、彦根城の城下町の遺産一つ一つの保存状態が良く、世界遺産にふさわしいまちだと言える」と話した。
ニコラさんの講演会は市が企画し市民88人が来場。講演後の質問時間では市民の一人から「彦根城や城下町を整備する際に芹川も付け替えられており、水の視点で世界遺産の議論に取り入れるのも重要」との提言もあった。