参院選は自民党が56議席、公明党が14議席を獲得し、改選過半数(61)を上回り、7議席を得たおおさか維新の会などを加えた憲法改正の勢力は参院(定数242)で3分の2を超え、今後、改憲論議が加熱するのは必至の状況だ。
さて今回の選挙戦を分析すると、民進党は前回の17議席を上回る32議席を獲得し、改選の46議席を割り込んだものの、健闘した。これは32ある1人区のうち野党統一候補が11選挙区で勝利した「野党共闘」に起因しており、特に東北ではTPPの影響からか、秋田を除く5県で自民候補を破った。
しかし、滋賀を含め近畿など西日本では野党統一候補が相次いで敗れている。与党候補はアベノミクスの継続を訴える選挙戦だったが、その恩恵を受けていない地方の有権者は必ずしもアベノミクスを支持したわけではなく、「民進党への根強い不信感」と「安倍首相の安定した政権運営」の2点を評価したためである。
また野党共闘と銘打って民進党は共産党と連携し「小異を捨てて大同につく」と主張した選挙戦を展開したが、やはりイデオロギーの違いは「小異」ではないことを有権者は見抜いていた。
いずれにせよ、これからの国政は憲法改正が焦点になる。今回の参院選で野党は「与党は憲法改正を隠している」と批判していたが、多くの有権者は安倍首相が改憲を目指していることを知っており、また改憲論議が国民の間に浸透していないことも自覚している。
ただ、小生はこれまで続いてきた改憲派、護憲派に分かれた不毛な論争ではなく、はたして今の憲法が時代の潮流に合った法規範なのかを国民が考える良い機会と捉えるべきだと考える。
いまだに国民の半数が投票行動を起こさないのだから、憲法改正論議を機に国民の政治への関心が高まることを望む今日この頃だ。(山田貴之)