彦根市芹町にあった国登録文化財「秋口家住宅洋館」が七曲り通り沿いの元岡町に移築され、7日に特別公開された。
同館は大正5年(1916)に歯科医院として建造。施主が職人を神戸の異人館へ連れて行き、建てさせたとされ、外観が洋風になっている。平成23年10月に国の登録有形文化財になった。その後、市の診断で耐震性の問題が明らかになったことなどから、当時の所有者が移築と第三者への譲渡を希望。市職員の鈴木達也さん(29)は市民団体・まち遺産ネットひこねの活動の中で市内の旧城下町や外堀などのマップを作っており、その一環で平成25年秋に同館を訪れた際、所有者から移築の話を聞き、その後 自身で所有して住むことを決断。文化庁の現状変更の許可も得た。
平成26年10月から解体工事が行われ、翌年8月から元岡町での着工が始まり、瓦屋根の木造2階建てで増築分を含めて延べ122・44平方㍍で今年5月に完成した。外観の色は薄い緑色だったが、景観上の配慮と木組みの隠れた部分の元々の色に合わせて少し赤みがかった白色にした。階段や窓枠なども大正時代のままで、施工した鈴竹工務店(豊郷町)の鈴木大祐社長によると、元々の資材の9割をそのまま活用したという。 鈴木さんのこだわりで、2階にあった「無用の長物」(通称・トマソン)のドアもそのままにし、鍾馗(しょうき)も付けた。
鈴木さんは「古い建物が壊されていくのを見ると、彦根が彦根ではなくなる感じがする。古い家を残していく、伝統的な建築技術を継承していくことが大切だと思っている」と話していた。
6月上旬から住み始め、今後はイベントなどの際に公開していくという。