拓殖大学客員教授を務めながら故郷のチベットに学校を建設する活動をしているバイマーヤンジンさんがこのほど、多賀大社で講演。流ちょうな日本語で会場の笑いを誘いながら、中国・漢民族によるチベット民族への差別や日本の美しさなどについて話した。
ヤンジンさんは1959年にチベットを侵略した中国政府が、反対運動をした祖父を捕まえ、その後に亡くなった祖父の遺体を返さなかったことや、文字の読めない両親を騙して土地を奪ったことなど、現代まで続く中国の非人道的な手法を紹介。「両親はこのような辛い思いを子どもたちにはさせたくない、という思いから学校に行かせてくれたと思う」と述べた。
大学生のころは回りが漢民族ばかりだったため、「『ばい菌がいる』『髪が牛のしっぽ』などと野蛮人扱いされ、退学したいと思ったが、学校に行かずに放牧で家計を支える兄や両親の事を思うと、耐えることができた」と説明。「チベット自治区に近い四川省の成都では、タクシーにチベット人を乗せない、車を売らないなどの差別が今もある」と話した。
「国、民族に誇りを」
ヤンジンさんは大学を卒業するころに、後に結婚する日本人留学生に出会ったことを機に日本の事を調べ、結婚後に移住し、現在まで18年間、日本で暮らしている。日本について「桜、新緑、紅葉など自然がすばらしい。お米もおいしい」とした上で、「チベット人が祈るのは、日本のような国になりたいと思っているから。国土も狭く、資源も無い日本がどうしてこれほどまでに力があるのか、やはりそれは『教育』だと思う」と解説。
日本で稼いだ資金でチベットに学校を10校作った理由として「一人でも多くのチベット人が大学を出て、中国政府にものを言える人になってほしい」とした上で「日本では(国旗掲揚反対など)色んな思想があるが、国旗を掲揚することはチベット人から見れば、うらやましいこと」「自分の民族、国、古里に誇りをもち、恩返しするために役に立とうとすることは当たり前。これからもチベットが良くなるよう、一生を尽くしたい」と語った。
講演後、声楽家でもあるヤンジンさんはチベットの歌も披露。来場者から大きな拍手を受けた。