20日に再開した彦根市議会2月定例会では冒頭で大久保貴市長への不信任決議案が提出。議員24人のうち17人が賛成したが、4分の3に1票満たずに否決された。また新年度の一般会計予算案は賛成少数で否決され、市は暫定予算を今月28日開会予定の臨時議会に提案する方針。新年度予算案の否決により、市民生活に影響が出るのは必至で、現市政の混迷の深刻さを露呈させた。
新年度の一般会計予算案は賛成5、反対18の大差で否決された。ほかの60議案は可決された。
採決前の討論には9人の議員のうち7人が新年度予算案を取り上げ、夢みらいの小川喜三郎議員が賛成の立場から、北川元気、辻真理子、和田一繁、獅山向洋、山内善男、谷口典隆の6議員が反対の意見を述べた
。採決では夢みらいの小川、赤井康彦、矢吹安子、夏川嘉一郎の4議員と公政会の安居正倫議員のみの賛成で、ほかが反対した。 新年度予算の否決を受け、市議会閉会後の記者会見で大久保市長は、4月から7月までの義務的経費のみの暫定予算を来週開会予定の臨時議会に提案する考えを示した。
会見で、市長は「市民生活に影響が出ないよう、行政がしっかり機能する予算を組みたい」と述べた。暫定予算には政策的な予算が盛り込まれないため、市は夏までに開催されるイベントや新しい市民体育センターの整備、小学校校舎の増築などに影響が出る可能性を示唆。6月議会に政策的な事業を含めた本予算を提案するとした。
花火大会中断や井伊直弼公奉告祭中止、舟橋聖一顕彰廃止など見直し事業について、市長は「まずは関係者が協議の場を設けて、課題を共有するのが大事だ」と述べた。
辞職の考えについて、市長は「大変、深刻に受け止めている。事業を進捗させることで信頼関係を築いていきたい」と語り、「市税を使って市長選をし、事業を停滞させてはいけない」と辞職を否定した。
不信任決議案の採決では賛成17、反対6、退席1で、成立する出席議員(24人)の4分の3には1人差で届かず、否決された。
不信任決議案は最大会派の公政会代表の西川正義議員が提出。庁舎耐震化の裏合意問題について「一連の不祥事で約20億円の負担増となり、事の重大性を市長としていかにお考えか」、彦愛犬の広域ごみ処理施設の建設候補地が白紙濃厚となったことには「1市4町の市民、町民の思いを無下にした管理者の責任は到底許すことができない」、新年度予算案に対しては「市長はどこに舵をとろうとしているのか、全く市民に聞こえてこない」と指摘。「即刻、退陣されることが最良の選択であることを申し上げる」と批判した。
討論では不信任決議案に反対の立場から夏川嘉一郎議員、賛成の立場から獅山、山田多津子、辻真理子の各議員が登壇。そのうち夏川議員は「彦根大花火大会の中断は、大草原にいるネズミ1匹が通ろうとしているようなもの」と述べた。これに対し獅山議員は「花火大会は今年で70回を迎える予定で、多大な経済効果を生むイベントであり、ネズミ1匹ではない」と反論した。
一人が退席した後に行われた記名投票形式の採決では、夢みらいの4人と公政会の2人が反対票を投じ、否決された。反対した公政会の小菅雅至議員は本紙の取材に「これ以上、市政を混乱するべきではないと判断した」と話した。
▽賛成=辻真理子、獅山向洋、北川元気、谷口典隆、安藤博、奥野嘉己、野村博雄、和田一繁、上杉正敏、中野正剛、山内善男、山田多津子、杉原祥浩、長崎任男、安澤勝、西川正義、馬場和子
▽反対=夏川嘉一郎、小川喜三郎、赤井康彦、矢吹安子、小菅雅至、安居正倫
▽退席=八木嘉之(以上敬称略)。
市議会閉会後、今期で市議を引退する安藤博議長があいさつ。新年度予算案の否決にふれ「今後、市は暫定予算を組むことになり、市民の皆様にご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきたい」と説明。また庁舎耐震化の裏合意問題を受けての百条委員会の開催などを振り返り「まさに市政の異常事態であり、市政運営を正常に戻すために努めてきたが、来期に持ち越すことになり誠に残念で、悔しい気持ちでいっぱい」と述べた。
市長に対しては「不信任決議は否決となったが、市長には重く受け止めて頂きたい。そして予算を一刻も早く組んでほしい」と求めた。