世界遺産登録の審査などをしているICOMOSU(イコモス)の国内委員会委員長を務める西村幸夫・東京大学大学院教授が13日夜、「世界遺産登録の傾向と対策」をテーマに彦根商工会議所で講演。彦根城の世界遺産登録について、国(文化庁)主導による国宝五城での登録を勧めた。
世界遺産の新しい傾向として、西村教授は▽審査の厳格化▽政治化▽都市開発とのせめぎ合い▽シリアルノミネーション(複数群での登録)の増大▽文化の多様性への傾斜―などを紹介。インドで1999年に世界遺産になった「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」が6年後以降にほかの鉄道と一緒に「インドの山岳鉄道群」として登録された事例を取り上げた。
彦根城の世界遺産登録に向けては「天守、城郭、城下町のどこまでを対象にするか」「単体かシリアルノミネーションか」「比較研究をどのように進めるか」「姫路城との関係をどうとらえるか」などの課題を列挙。日本の城(天守)の特徴として「軍事施設で大規模な木造建築だった」と説明した上で「日本の城の特徴は世界にはなく、文化の多様性の面から考えると日本型はユニーク」「日本の城は大砲が撃ち込まれたら一発で終わり。大砲が普及する頃に平和になり、大規模な木造建築は戦争がなかったことの証明にもなり、世界的に見ておもしろい」と述べた。
さらに、西村教授はすでに世界遺産に登録されている姫路城に「国が主体となって鈴を付けては」との表現を使いながら「国益を考えれば国宝五城が良い」と提案。「姫路城と、すでに準備が整っている彦根城を軸に、証明できる仲間を入れれば良い」と語った。
世界遺産登録を審査する組織の国内トップが国宝五城案を提案したことで、今後は獅山向洋市政時代に上がっていた同案が再浮上する可能性がある。西村教授の講演は彦根商議所による彦根ヒストリア講座の第6講として開講され、市民約50人が受講した。