彦根城の世界遺産登録についてはここ近年の市長選で、毎度のごとく市政課題の一つに取り上げられ、その後の市政において登録に向けた施策を進めてきたが、その実現のめどは見えていない。また市民の中には既にあきらめモードさえ漂っており、盛り上がりもいまいちだ。そんな中ではたして世界遺産登録は実現できるのだろうか。
前市長の時代は、▽城内や大名屋敷など特別史跡内を「コアゾーン」に、旧城下町を「バッファゾーン」に分けて登録を目指す単独案▽松本城、犬山城、すでに世界遺産になっている姫路城との国宝四城(当時)案—を中心に進められてきた。
しかし現市政は国宝案を外し、特別史跡内のコアゾーンに焦点を絞った形で進めてきたが、平成28年度には城下の物件を加える形に変遷。3月末には特別史跡と、辻番所、井伊神社、外堀土塁など城下の5件を含めた「城を中心に発展した江戸時代の都市構造」をコンセプトにした準備状況報告書を文化庁に提出した。
今後、井伊家ゆかりの寺や藩校、武家屋敷、お浜御殿などが追加されることも考えられるが、彦根城世界遺産登録推進課の担当者は「国の重要文化財クラスを中心に世界遺産の登録候補物件に加える場合もあるが、逆に外していくこともあり、最終的には5件前後になるのでは」としている。
市は今年度から2、3年かけて推薦書原案を作成し、並行して学術検討委員会で協議をするなどして、平成33年度までには国内推薦を受けて、同36年度までに世界遺産登録を目指す意向だ。
しかし、世界遺産登録のネックになっている姫路城や世界のほかの城郭との差別化が図れるのかは未知数である。しかも肝心の市民の盛り上がりは皆無に等しく、市がどれだけ啓発しても響かないのが現実だ。彦根城の世界遺産登録の前途はまだまだ厳しいと言えよう。【山田貴之】